開催日:2006-11-1〜30 10:00〜18:00 月曜休廊
松本蒼平写真展
「京・つれづれ」に寄せて
酒谷佳子
私の父、松本蒼平が夫の仕事先である集酉楽で、八十歳を記念し
て写真展を開くことになりました。父が写真を撮り始めたのは昭和
30年代の初め頃、知人から譲り受けたメグロという大きなオート
バイに乗り、ライカを持って、ほとんど自動車も走っていない京都
をあちこち写して回っていたそうです。
私が高校生の頃、真冬に撮影に行く父についていったことがあり
ます。まだ真っ暗なうちに、暖房のない車にオーバーを着込んで乗
り、寝ぼけ眼で着いたのが滋賀県堅田の浮御堂。白々と明けてくる
日の出を待って、なかなかシャッターを切らない父に、私は寒さで
震えながら、早く終わらないかなあと待っていたものです。
写真には夜明けや日没の光の具合が一番美しいと、父はそれから
も琵琶湖や余呉湖にしばしば撮影に出かけていきました。水にうつ
ろう波や光、雪景色などの写真を集め、万葉集ゆかりの地をめぐっ
た「近江路の万葉展」を開催したのが25年前。それから趣味のヨ
ットをハワイ沖で写した「ケンウッドカップ・ヨットレース」など
の写真展などを経て、現在は「ファインド・アイ」という、京都で
写真を趣味にしている各界の方たちとの会に結成時から参加し、年
に一度文化博物館で展覧会を開いています。
年齢と共に重いカメラをかついで歩き回ることが億劫になり、今
回の写真展は小型のカメラで京都の町を散策し、撮影したものです。
80年暮らした父にも私たちにもなじみの深い場所ばかりですが、
ただの観光写真では物足りないと、神社仏閣の光と影の美しさを捕
えた写真を多く選びました。父が撮影に出かけている間、俳句をた
しなんでいた母も、写真展に合わせて2冊目の句集を発行し、会場
に展示しております。紅葉の美しい季節、散策のついでにもう一つ
の京都にもどうぞお立ち寄り下さい。